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恋愛と信仰①

(胸を張って言える体験ではないかもしれないが、ささやかな体験である。最後まで読んで頂ければ分かるが、こういうことは本来書くべきじゃないかもしれないね。)


 少しだけ時間が経ってしまったが、先月に鎌倉にふらりと遊びに行ってきた。

ふと心に穴が空いてしまった時には何故か思い立った様に鎌倉に向かう。疲れた時、どこか物悲しい時、心の底に溜まった“澱”みたいなものを洗い流す時にだ。僕のささやかな人生の中ではいつからかシンボリックな場所となっていたのだ。お寺に興味があるのではない。歴史の流れを感じ、山々の自然に囲まれ、そして何より海があるからだ。大好きな場所だ。

高校生の時からガールフレンドともよく鎌倉に遊びに行った。
15歳の時の僕が由比ガ浜でガールフレンドと手を繋いでいる。17歳の僕がガールフレンドと北鎌倉の駅で踏み切りを待っている。20歳の僕は鎌倉の大仏を前に照れくさそうにガールフレンドの放ったシャッターにはにかんでいる。23歳の僕は源氏山の上で街並みを見下ろしながらガールフレンドととても味の薄い彼女の作ったお弁当を食べている・・・・・・しかし、数限りなく鎌倉を訪れた無数の記憶の光彩は次第に弱まり、僕の中から零れ落ちる様に消え去っていった。思う出そうとしても思い出せることは限られてくるものだ。それが歳を取るという事なのだろう。


 27歳の時にその当時のガールフレンドと記念に鎌倉に行った。どこを巡ったかは覚えていないが、僕らはとても静かだった。会話は途切れ途切れだった。まるで壊れた無線で話しているみたいだった。そして、日が暮れた北鎌倉の閑散とした帰りのプラットホームで僕らは言葉に出さずに別れることを決めた。僕らはお互いに最初から記念の為に鎌倉に行こうと考えていたのだ。そう、最後の記念として。最後の。彼女との最初のデートも鎌倉だった。

それから付き合うガールフレンドとは鎌倉には行くことはなかった。それが僕にとって正しいことなのだといつからか思う様になった。あるいは一つの生き方の変更を余儀なくされたのだと思う。

最後の記念に鎌倉に行ったそのガールフレンドとは24歳の時に高校の同窓会で卒業ぶりに再会してすぐに付き合った。
当時の仕事の定時が夜中の12時終了だったので悩み、時間革命をしたいと祈っていた。学会活動したいからだ。同時に前の彼女と別れて数ヶ月経っていたので彼女が欲しいとも祈っていた。それで父親を折伏して入会させた翌日に出社すると、社長から電話があり「明日からは会社の定時を夜9時までとする」と言われた。会社が出来て10年以上続いた会社の慣習が一夜にして変わったのだ。更にその翌日には同窓会があったが、夜中12までの仕事だから「行けない」と事前に断っていた。しかし終業時間が変わったせいで同窓会も2次会から参加出来たのだ。高校時代に一言もしゃべらなかったその子と何故か意気投合し、一週間後に付き合い始めた。父親を折伏した後一週間程で「時間革命」と「彼女が欲しい」は叶ってしまった。

実は、その彼女(Aさん)のことを何年も密かに好きだったB君がいた。B君とは僕も仲がよかったが、B君が彼女を好きだなんて当時は考えもつかなかった。しかし思い起こせば、B君に「彼女だよ」と言って紹介したAさんを見つめる彼の表情は忘れられない。しばらくして僕はB君を折伏した。僕は自慢気に体験を語った。時間革命と彼女が出来た功徳のことを。彼が彼女を好きだったことなんて一切知らずに。

それから数年して27歳の時の最後の記念の鎌倉で僕らは別れ、しばらくしてから彼女はB君と付き合い始めた。当然、僕に内緒で。彼は虎視眈々と狙っていたのだ。

ある時電話が彼からあった。「ちょっと話があるんだ」
飲み屋で様々な世間話に花を咲かせた後に彼は最後にこう言った。
「実は、初めて言うんだけど、○○(僕のこと)とAが別れてしばらくしてからAと付き合い始めたんだ。でさ・・・・・・結婚が決まったんだ」
僕は驚き、「おめでとう」と一拍置いてからなんとか喜んで言った。
最後の最後に彼は突然一言だけこう僕に言い放った。会話とは何も脈絡もなかった。

「そうそう、明日、Aと鎌倉行くんだよね」

僕が入会させても実家の都合でご本尊をお巻きした状態だった彼をなんとかしようとそれまで努力していた。しかし、逆に彼は心底僕を恨んでいたのだ。長い間好きだった女性が、6年ぶりに再会した友人である僕と突然付き合い始めたことに。そしてそれを自慢気に信心に絡めて語る僕のことを。だから彼は決定的な一撃を持ってそれまでの恨みと憎しみを爆発させる様に僕を完膚なきまでに打ちのめしたかったのだ。積年の想いを晴らす為に。

「そうそう、明日、Aと鎌倉行くんだよね」という一言をもって。

彼女から僕とのことを聞いていたんだと思う。僕と彼女がよく鎌倉に行ったことを。だから彼は、彼女の記憶の中の僕との鎌倉を自分との鎌倉に塗り替えたかったのだ。彼はこう思っていたのだろう。

”結局は俺はオマエに勝ったんだ。Aを俺は最後に獲得したんだ”と

彼女が彼と結婚することは当然嬉しいことだった。しかし、僕は彼のその一言によって決定的に何かを損なってしまった。それは人間の怖さであり、言葉の怖さと恐ろしさだった。人間の放つ言葉が誰かを殺すことを知った。あの時以来僕の中の何かが死んでしまったのだ。深く傷つき、深い深い井戸の中に突き落とされたみたいだった。大きく自分が変貌してしまったと感じる。

②へ続く。
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かいつぶり

Author:かいつぶり
職業 マスコミ

趣味 読書、楽器、小説を書く、料理、音楽

好きな食べ物・・・スイーツと酸味の少ないコーヒー、美味しいフランス料理と美味しいワイン。それさえあれば至福の時

好きな音楽 70年代のソウルミュージック。80年代前半の西海岸サウンド。あとジャズや、山下達郎周辺

好きな作家 ドストエフスキー、カポーティ、アーヴィング、ヴォネガット 

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